笠新道での挫折

　 当初、笠が岳～双六岳～槍ヶ岳～北穂高岳と縦走する計画を立てていました。
笠新道で時間がかかることを見越して、前夜のうちに新穂高温泉に車で到着し、雨が小降りになるのを待って、午前３時に出発したのです。
笠新道入口には５時に到着し、朝食を摂って、５時半から急登をせっせと登り始めました。
しかし、一向に高度が稼げない。
焦る気持ちと続かない息。このままでは、どう考えても日没までに笠ヶ岳山荘に到着できない。
そう思ったら、もう一歩も上には歩けなくなっていました。
午前８時、登るのをあきらめました。
登ってきた道をひたすら下山しました。
２時間半も登ってきた道を１時間で下りてしまいました。
そこから新穂高温泉までの１時間はとてもつらかったです。
肩に食い込むザック、なんとも言いあらわせない挫折感，敗北感。
車に戻るとすぐに着替えて、帰路につきました。
１時間ほど車で戻った頃、ふと思ったのです。
「このまま帰っちゃいけない。第一目標の槍ヶ岳に真っ直ぐ向かうルートでもう一度チャレンジしたい。」
車をＵターンしました。
再び新穂高温泉に着き、観光案内所に駆け込みました。
朝食を早く摂らせてくれて、弁当を作ってくれる宿。
そんなわがままを聞いてくれる宿がありました。
そして、温泉で英気を養って、翌朝、一路、槍平小屋を目指して歩き出したのです。