【現地へ】
 　前日の昼に自宅（千葉）を出発し、仮眠をしながら車で高速を走り、約１２時間かけて
深夜２時に現地（石川県輪島市門前町）へ到着。
ボランティアセンターとなっている門前東小学校の近くに、ボランティア用の駐車場があり
そこへ行くと車中泊しているボランティアが数名いた。
同じように車を止めて、寝袋を出して助手席で仮眠。

【避難所張り付きのボランティアは不要】
 　午前６時、ボランティアセンターへ行ってみると、受付が午前９時からと書かれていたので
一旦車に戻り、避難所をまわってみることにした。
　まず、１０年前の重油回収に行った集落を訪れた。
屋根にブルーシートを掛けたお宅がたくさんあり、集落の神社では灯篭が倒れて散らばって
いた。土地の方にお話を伺ったが、避難所にいた人たちは前日のうちに自宅に帰られたと
のこと。手伝いが必要な場合は、ボランティアセンターに連絡するということだった。
　次にニュースで何度も流れていた避難所の門前西小学校を訪れた。
ここでも避難されている方にお話を聞いたが、３度の食事は市の方から給食が配給され
特にボランティアをお願いすることはない、と言われた。
　当初、阪神大震災や中越地震のような、避難所張り付きのボランティア（被災者に食事の
配分をしたり、身の回りのお世話をする）を想定していたがこの２ヶ所の被災地訪問で、
今回の震災ではそういう形態のボランティアは必要ないと思われた。
　ならば、ボランティアセンターを通したボランティア活動をしようと思い、再度、門前東中学校の
ボランティアセンターを訪れ、９時になるのを待った。

【半壊家屋のガレキ撤去】
 　ボランティアセンターには１００人ほどのボランティアが、作業の配分を待っていた。
いわゆる「ハン場方式」という方法で作業は配分される。
本部担当者が、仕事内容と必要人数を読み上げ、それに行きたいと思った人は、
手をあげて、集まって行くというやり方。
　私が手をあげたのは、「家屋からの荷物運び出し，男性５名」というものだった。
しばらく待たされた後、マイクロバスで２０分ほど走り、山の中腹にあるお宅に到着。
そこでもしばらく待ち、そのうち居住者のおばあさん（８０歳）が来られた。
　話を聞いてみると、地震で木造家屋の側面が崩れたので、解体してまとめてほしいという
ことだった。
現場を見てみると、確かに壁とその上のひさしが、斜面に向かって崩れ落ちていた。
当初の「家屋からの荷物運び出し」とは、ずいぶんと食い違う作業だと感じた。
おばあさんは涙もろい方で、「来てくれてありがとう」と言いながら泣き出してしまった。
ちょっと危険な作業だと思ったが、５人のうち誰もそれを口には出さず、作業を始めた。
作業を始めてわかったが、私以外の４人は建設業などの専門業者であり、偶然集まった
にしては、なんとも頼もしいメンバー構成であった。
私は、解体作業はその人たちに任せて、解体されたガレキを運ぶことに徹した。
　ガレキの中には、「昭和２９年京都旅行」と裏に書かれた金閣寺の絵や、「尋常科第二年
教案」と毛筆で書かれた冊子が出てきた。
それらを見せる度に、なつかしがって、おばあさんは泣いてしまった。
そのような、「思い出の品」は、ガレキとは分けて、大事に取り置いた。
　お昼をはさんで、午後２時には作業が終了し、ボランティアセンターへ連絡して、迎えの
バスを待った。
おばあさんは、地震発生直後から、山の下にある娘さん夫婦のお宅へ避難していたので、
そちらへ一緒にお送りすることとなった。
やはり涙もろいおばあさんで、別れ際も泣いてしまった。「いつまでもお元気で」と皆で声を
かけて別れた。

【宿泊無料の民宿】
 　午後３時に解散。
ボランティアセンターの作業配分は、午後２時締め切りなので、この日の作業はここまで。
さて、今夜の宿をどうしようかと迷っていたら、センターの表にある掲示板に、「宿泊代無料」と
書かれた民宿が紹介されていた。
定員１２名、食事なし。
ダメ元で電話してみたら、空きがあるというので、予約した。
センターから車で４０分ほどの距離にその民宿はあった。
途中の町で食料を調達し、明るいうちに民宿へ。
ちょうど民宿のおばさんが外に出ていて、迎えてくれた。
少し話をしたが、「遠くから大勢ボランティアに来てくれているのに、隣町の者が何もしない
わけにはいかない」と言い、食事をつけないのは「長く続けたいから」だということだった。
とにかく車中泊を覚悟していただけに、布団で眠れる上に、お風呂まで入れるとは、
なんともうれしかった。
　その後、この民宿を拠点にして、長期のボランティア活動をする人も出てくることになる。
「タダで泊まれる」というだけでなく、ボランティアどうしの貴重な情報交換の場ともなった。

【心理カウンセラー】
 　民宿で同室になった方は、「心理カウンセラー」という肩書きをお持ちだった。
家庭裁判所で青少年に付き添ったりすることが主な仕事だという。
避難所張り付きのボランティアなら、その肩書きは大きく役立ったと思うが、センター中心の
活動では、そのようなニーズは地震発生一週間後ではなかなか出てこない。
その後わかったことだが、そのようなボランティアは、一般ボランティアとは区別され、
市役所で医療ボランティアとして扱われるらしい。
連絡先を聞いていたので、この方には、帰宅後にそのように連絡した。



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